Archive for 5 月, 2010
普天間基地問題 鳩山・仲井真会談
鳩山首相と仲井真知事の会談が民放で中継されていました。会談の会場、知事室か応接室かは聞き漏らしましたが、大きな屏風が正面にありました。一読して、「万国津梁之鐘」の銘文でした。琉球王国の繁栄を象徴するこの大きな「鐘」を見たのは随分前でした。まだ、首里城の正殿が復活する前で、県立博物館に展示してあった時代でした。その時のサテライト講座のためのロケのVTRからとった写真は『実況中継』に入れてあります。(白いスーツを着た、かなり気持ちの悪い当時の自分が鐘の横に立っています)。
那覇の港が東南アジアから中国、朝鮮、日本までの広大な地域の交易の要にあった。すなわち、「万国」、世界の国々の港を結ぶ拠点として繁栄していた状況を謳ったものです。授業でも必ず説明するところなので、主要な部分を意訳すると、
琉球王国は南の海の中に湧き出た理想の国である。中国とは車の両輪のような関係、日本とは唇と歯のような関係にあり、那覇の港には中国・日本だけでなく朝鮮半島の宝物も集まってくる。世界の宝物はなんでもこの那覇の港に集まってくるのだ。
この銘文を思い出すたびに、15世紀前半(1429年)の琉球王国の成立とその繁栄。17世紀以降の薩摩藩による琉球王国の植民地化、そして、明治政府の「琉球処分」、そして、沖縄戦と続く悲劇的な歴史の展開を考えざるをえなくなります。沖縄が本土の武家政権、日本政府の支配を甘受せねばならなくなって400年余。かつて、「琉球の時代」と呼ばれる繁栄をもたらした「南海の勝地」という地理的な条件が、アメリカの海兵隊駐留のための不可欠の位置にあり、それが日本の安全保障にとっても不可欠だということになってしまう。まさに「要石」「キーストーン」であることが沖縄に戦争と平和の両面において、周辺諸国にとって無視できないものであり続けているわけです。その意味からも、普天間問題は、誰かが誰かを批判したり、一面から特定の案を主張できるような問題でもないということだけは、自明のことでしょう。
実況中継CD-ROMブックス日本史B vol.2 が刊行されます
実況中継の音声版、『CD-ROMブックス日本史Bのvol.2』が完成しました。列強の接近・幕末、化政文化から鳩山由紀夫内閣の成立まで。CD-ROMで800分の講義を聞いてもらいながら、サブノート形式のテキストで学習する形の参考書です。五月下旬には店頭に並びます。vol.1とあわせて、800分×2=1600分、約27時間弱の授業が詰まっています。河合塾の教室で会うことのできない受験生にも、これで、教室での授業を受けてもらえることになりました。しかも、繰り返し聞いてもらえるので、しっかりとした基礎学習を完全に吸収してもらえると思います。27時間で1年分の授業内容を知ることができるのですから、1週間あれば旧石器文化から現代までを一通り学習できます。サブノートも完成させて、基礎学力を万全なものにしてください。センターでも二次論述でも、早慶などの難関私大でも、まずは基礎学力の確立が第1段階です。遅くとも、夏休み中には、原始・古代から現代までの一通りの知識は身に付けたいものです。
日本史で受験する方はぜひ活用してください。史料の学習なども音声での解説を無料で公開しています。
こちらもぜひ利用してください。
攘夷決行
孝明天皇の攘夷決行要求に困り果てた幕府が、「攘夷決行」を約束した期日は、文久3(1863)年5月10日。普天間基地の移転問題の解決を、鳩山首相が5月末、今月末としたのと同じ、追いつめられて約束してしまったのと同じような情況でしょう。文久2(1862)年の島津久光の上洛、寺田屋事件、そして勅使大原重徳を擁しての江戸下向と、幕府の文久改革、生麦事件。ところが、同年後半になると、朝廷は一挙に攘夷論に傾き、長州藩と三条実美らの急進派の攻勢にさらされた幕府はついに文久3年5月10日の攘夷決行を朝廷に約束したわけです。長井雅楽の『航海遠略策』などをもとに、開国論をとっていた長州藩が攘夷論に転換していたこと。幕府側の主導権を将軍後見職一橋慶喜・政事総裁職松平慶永・京都守護職松平容保等が握る。まことに、受験生泣かせの政治情況の激変、情勢の流動化が著しい時期です。生麦事件の報復として、イギリス艦隊が鹿児島湾にあらわれ、長州藩を屈服させた薩英戦争も起る。
大河ドラマは、ドラマなので坂本竜馬をヒーローとして描くのが目的ですから、そんな複雑な動きにかかわっているわけにはいかないことは理解できます。しかし、教科書には吉田東洋がチラっと出てくる程度。土佐勤王党などでてきません。もちろん、土佐藩の政治抗争は大事なところでしょうが、この時期の主要なテーマではありません。もっと根本的なところはまったく省略され、坂本竜馬の素晴らしさを強調するところばかり。一通りの幕末史を理解していないと、ドラマを見れば見るほど、実際のところは何もわからないということになるでしょう。所詮はドラマ。歴史とは関係のないもの。主役をかっこよく描くだけに終始する。恋愛物、刑事物と同じ、時代物のドラマだと割り切っていればいいわけですが、なにか大河ドラマを見ていて歴史を学んだような気になることだけはやめてほしいものです。大河ドラマを見てもしこの時期の歴史を理解しようとしても、どんどん疑問が湧いてくるだけ。
さてさて、「歴女」「アシュラー」「大河ドラマ」などの歴史ブームはいったい何なのか? どのような現象なのかはわかりませんが、気になるところです。「みんな坂本竜馬になろう」などという、驚天動地の政治家が現れるにいたって、もはや開いた口がふさがらない今日この頃です。
アルミ貨は叫ぶ 早くプロペラになりたい
日経BP社の依頼で日本史に興味をもったビジネスマンに勧める本をいくつか紹介しておきました。続いて、「今度は日本史に関わる名セリフを」という依頼が来ました。ビジネスマンが元気になるような名セリフを紹介したいということなのですが、「はい」と安請け合いしてから????。
ありふれた名セリフを適当にというのは趣味に合わず、かといって、これといった名言やセリフといってもイメージが湧かない。しかし、「できません ごめんなさい」と素直に断るのもイヤ。まあ、有名なところをいくつかあげておくのも手ですが、さすがに、龍馬ネタなどは避けたいし・・・・。と悩んでいるところです。
一番、いままでで印象に残っているのは、名言ではなく、名コピーですが、
「アルミ貨は叫ぶ 早くプロペラになりたい」
というのがあります。太平洋戦争末期の「欲しがりません 勝つまでは」と同趣旨の、国民に戦争協力を呼びかけるものです。「欲しがりません 勝までは」は余りにも露骨で「臥薪嘗胆」の類です。しかし、この「アルミ貨」は同類とはいえ、凄い。
太平洋戦争末期、あらゆる物資が不足する中で誕生した名コピーです。とことん行き詰ると、「アルミ貨」、今で言えば1円のアルミ貨が「叫ぶ」んです。アルミ貨が叫ぶ。「こんなことやってる場合じゃない」「プロペラになりたい」と。財布の中から出て、特攻機のプロペラになりたいというんでしょう。実は、政府は「陶貨」の発行まで考えていました。それなら「土」があればいいわけです。この陶貨は実際には使用に至る前に敗戦ということになってしまったらしいのですが、その試作品を以前買った記憶があります。探せば出てくるくるかもしれませんが。そう言えば、備前焼の手榴弾も話題になったこともありました。
しかし、コピーもここまで来ると鬼気迫るというか神業の域に達している・・・と勝手に思っているんですが、これを推薦するべきかどうか、かなり迷っているところです。
